《MUMEI》
「ロア・アーキルス」
「「・・・深々と空が啼き、」」
声が流れる。意識を無くしたはずのリースの声。そして、寄り添うように聞こえる・・もう一つの声。
槍から生じた蒼い燐光がリースを包むように舞う。
「「刻、酷と時が続く、」」
フラリと立ち上がるリース。周囲を渦巻く燐光は輝きを増し、薄暗い洞窟内を蒼く染めていく。
異常を感じ取ったのか、リザードマンがリースの方を向く。
「「トキはただ・・」」
一瞬にしてリザードマンとの間合いを詰め、槍が突き出される。
「「想いを抱く。」」
次々とリザードマンの体を貫き、彩詩から離していく。
「「奇跡は訪れない。」」
リザードマンが後退を試みるが、それすら叶わない。
「「夢は・・」」
リザードマンの両腕を斬り飛ばしそのまま槍が旋回する。
「「己で掴むものだから・・」」
声が響く。蒼い燐光は槍の先端へと集まり、大きな刃と化す。
「「サイレント・ロンド。」」
リザードマンを貫く、蒼い巨槍。
「「トキは戻らない・・」」
詩が続く。
槍を引き抜かれ、崩れ落ちるように傾いていくリザードマン。
「「歪められない、答え。」」
蒼い燐光がリザードマンの全身に纏わり付く。
「「散りなさい。アナタのトキは終わりです。」」
パリィィン・・・
砕音。
振り抜かれた槍が燐光ごとリザードマンを砕き去る。
リースの体に纏わりついていた蒼い燐光がゆっくりと消え始める。
「「彩、いつまで寝てるつもり?」」
リースが彩詩の側に膝を付き治療しながら声をかける。
「リース・・違う、その声・・ロア?」
リースの顔を見ながら声を出す彩詩。
「「正解。って言っても、レベリオンに籠めた魔力で造った擬似的な存在に過ぎないよ。籠めた魔力を使いきれば・・もう存在できない。」」
槍を示しながら治療を続けるリースの姿をしたロア。
「そっか・・ロア、ごめん・・ね。」
座り込んだまま、頭を下げる彩詩。
「「謝るなんて・・明日の天気どうしたいのよ?」」
苦笑しながらそんな事を言うロア。
「酷いなぁ・・久しぶりに会って、そんな事しか・・言わない・・なんて。」
「「そう?ま、いいじゃない。」」
ロアの言葉に笑顔を浮かべながら話をする。
「「っと・・手当て完了。」」
血が止まり、痛みが和らいだ。
「ありがと。」
先に立ち上がっているロア手を握り、立ち上がる。
「「どう致しまして。・・・彩、リースのことお願いね。この子、自分だけで抱え込もうとするからさ。助けてあげてください。」」
そう言うと頭を下げるロア。
「うん。もちろんだよ、リースは私にとっても大切な・・妹分だから。」
小さく頷く彩詩。
燐光がどんどん消えていく。
「「バイバイ、彩。」」
悲しそうな笑いを浮かべ、小さく手を振るロア。
「・・・また・・会えるよね?」
涙を流しながら彩詩がロアの顔を見る。
「「も〜・・わがままなんだから、それじゃあ、これでいい?またね、彩。」」
困ったように笑い、言い直すロア。
「・・約束だからね。」
泣き笑いの表情を浮かべる彩詩。
「「うん、約束。」」
彩詩と同じように泣き笑いの表情を浮かべて、眼を閉じるロア。
最後の燐光が消えた。

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