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《MUMEI》 笹木希「の・ぞ・む♪くん♪」 「ぁ?…あ……何だ……小崎さんか…」 小学校で同じクラスだった小崎綾。 器用に折りたたまれた紙を俺に手渡す。 「久しぶりー!あのね希、ソレ、友達から預かって来たっちゃけど、良かったら話ししたいって。教室で待っとうよ」 「…何?手紙?(“笹木さんへ。いきなり手紙書いてゴメンなさい。綾の友達で原弘美といいます。笹木さんのこと聞きました。空手で日本一!?世界三位!?スゴいです!ぜひぜひ私と友達になってください。お返事待ってます!!2―2原弘美”)ん?…原?〇〇小【出身校】?△△小【最初の小学校】?」 「ん?いや?…☆☆小【△△小の隣の校区】のハズやけど…」 「☆☆小か。ってか、世界って…(流派が違うのに。誰かに言ったかな?)……まあ良いや。で?どこ居ると?」 「アレ?違った?日本一はあったよね?あ、2組の教室に居るよ」 ちなみに俺は4組。会わない理由もないので、会うことにした。 妙な緊張感を持ちながら2組の教室のドアを開けると、細身の女子が机に腰掛けていた。懐かしい顔。 「ひろ…?…ちゃん?」 七年程の月日は経ったが、一目で思い出した。確かに弘美だった。 「のんちゃん!久しぶり!手紙読んでくれた!?綾から聞いたよ!空手で日本一なったっちゃろ!?世界三位とか!!マジ凄い!!偶然やけどウチも空手しようとよ!弱いけどね〜!ってか、幼稚園で一緒やったとよね?お母さんに聞いて思い出した!」 聞き慣れない懐かしい呼び方で始まったが、懐かしむ暇も無い程ハイペースな話し振りに圧倒された。 「ん…久しぶり…空手か…この前やめたけど。……元気?みたいやね…」 私立中学を辞めたのと同時期に、一生を賭けても良いと思っていた空手も辞めなければならなかった。 母から、親父が師範代に借金をしていることを聞いた。親父の性格上、返すアテもないのだろう。師範代は気にするなと言ってくれたらしいが、知ってしまっては気にせずにはいられない。 いや、探せば続ける方法はあったかもしれない。だが、当時の俺は何もせず逃げ出してしまったようなものだ。 確かに小学生時代には日本一を獲り、連覇と世界を狙ったが、去年の夏に行なわれた全国は上記事情で棄権。結局は、それが最後の大会となった。 つまらない理由だが、それで全てがどうでも良くなったのは事実であり、情けない事に、現実逃避している自分自身の心に弱々しくも存在する『良心』に対する言い訳にもしている。 「辞めた!?何で!?もったいなくない!?まぁ、日本一とかになったら違う事したいとか思うかもね〜……うちも県一位で良いけんなってみたいし♪」 弘美は、何の疑いもない無邪気な笑顔で、俺を見ていた。 “従うは自分の意思のみ”と言わんばかりの態度をとっていた俺が、家庭の金銭事情で辞めさせられた事など言えるわけもなく、まだまだ続けたかったという想いを、心の奥深くに沈めた。 嘘と真実の交差する戸惑いの中、気付けば… 「あぁ、飽きた……」 嫌味にしか聞こえない生意気な台詞を吐いていた。 心なしか、自分の声が震えているようにも思えた。 おそらく弘美は気付いていないだろう。 前へ |次へ |
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