《MUMEI》
出会いは夏休み
僕と彼が出会ったのは、僕が小学4年生で、彼が小学1年生の時だった。

両親に連れられ、母方の実家にはじめて行った時だった。

当時、僕の学校は夏休みに入ったばかり。

いつもは父方の実家に行くのだが、母方の実家には行ったことがなかった。

理由は母が田舎を好きじゃなかったからだ。

母の実家は昭和時代で時が止まっているような村で、豊富なのは自然ぐらいだと母が苦笑しながら言っていた。

だけど今回、さすがに実家の家族から、顔を見せろとの催促が来たらしい。

さすがに10年以上、実家に帰っていないことをマズく思ったらしく、今回の夏休みは母方の実家で過ごすことになった。

僕は少なからず、楽しみだった。

僕の住んでいる街は都会だし、父方の実家も田舎ってほどじゃなかった。

だからか、大自然に憧れを抱いていた。

それにまだ顔も見たことがない、親戚達に会うのが楽しみだった。

何度か電話や手紙・ハガキなどでやり取りしたことがあるぐらいで、交流がほぼ無かったから。

でも実は、この帰省にはちょっと裏があった。

聞かされたのは、すでに新幹線に乗り、電車に乗り、バスに乗り、タクシーを乗り、実家の邸に向かって歩いている途中だった。

何でも母の兄の長男が、ちょっと難しい性格をしているらしい。

そのせいか学校でも浮いていて、一緒に住んでいる家族や親戚にも心を開いてくれないようだった。

なので歳が近く、今まで接したことがない僕になら、興味を持ってくれるんじゃないかっていう話が、母と伯父の間で交わされていた。

将来、実家を継ぐ立場だから、もう少し他人と交流を持ってほしいらしい。

要するに遊び相手になってほしいとのこと。

僕は笑顔で承諾した。

僕にとってはイトコだし、年下のコと遊ぶことなんて滅多になかったから、楽しみにしていた。

実家の邸は小山の上にあるので、坂道を歩く。

母の言った通り、民家よりも自然が目立っている場所だった。

でも空気は美味しいし、緑がキレイで、セミの声が心地良かった。

夏休みいっぱいここにいられると思うと、心は高鳴った。

…しかし実家の邸の前で、呆然となった。

ウチは都心に建つそこそこ高級なマンションに住んでいた。

父の実家は普通の二階建ての一戸建て。

しかし母の実家の邸は、まさに昭和という時代がピッタリな、大きくて広い和風の邸だった。

…ここで肝試しなんてやったら、雰囲気ピッタリだな。

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