《MUMEI》

そう思いながら門をくぐった。

伯父夫婦は玄関で待っていてくれて、僕達を歓迎してくれた。

…が、母はさすがに説教されていた。

どうも田舎嫌いは生まれ付きらしく、終始渋い顔で伯父と対戦していた。

その間、伯母がここのことを説明してくれた。

ここ、宮乃原(みやのはら)家は先祖代々・地主だった。

そしてこの土地は今では枯れてしまったものの、昔は金が取れたり、温泉が出ていたらしい。

しかしすっかり取り尽してしまい、金は底をつき、温泉は今では実家のおフロに使うぐらいしか出ないという。

それでもおフロは立派らしいので、楽しみだった。

今では農業をしており、それで細々と食べているらしい。

けれど一応、跡継ぎが必要なのだと言った。

それは伯父夫婦の長男に決まっているものの、消極的過ぎて将来がちょっと不安らしい。

上に5人も姉がいるせいで、最近では跡継ぎを放棄するようなことも言い出しているらしい。

僕にはあんまり関係ない話だけど、跡継ぎ問題は大変みたいだ。

昔のように長男に継がせたい伯父夫婦、だけどそれに反発しているイトコが何だかかわいそうだった。

僕だって生まれた時から将来が決まっているなんて、ちょっとイヤだ。

とにかく僕にはイトコに友達になってほしいという伯母の言葉に、素直に頷いた。

ふと邸の中を探索してみたくなった。

けれど母は伯父とバトル中で、父は疲れていた。

なので1人で探検に行って来ると言って、僕は部屋を出た。

歩けば歩くほど、邸の古さが分かった。

でもこういう家も良いな。

古いけど、人が過ごしてきた歴史みたいなのが感じられる。

しかし僕は油断していた。

ウロウロしているうちに、迷子になってしまったのだ。

「あっあれ? ここ、どこだろう?」

辺りを見回しても、同じ光景にしか見えない。

ここまで広い家の中を歩くのははじめてで、まさか迷うなんて思わなかった。

周囲に人の気配は無い。

どうしようかうろついているうちに、奥へと来てしまった。

薄暗く、何か出そうな雰囲気に、泣きたくなってくる。

「ううっ…。だっ誰かいませんか〜?」

泣きそうな声を出すも、反応無し…。

「だっ誰かぁ〜」

それでも声を出さなきゃ、泣きそうになっていた。

ところがとある部屋の前で、いきなり襖が開いた。

「うわっ!?」

驚いて後ろに引っ繰り返ってしまった。

中から出てきたのは、陽に焼けた肌に、少し伸びた黒い髪、大きな茶色の目をした子供だった。

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