《MUMEI》

不安そうな顔で、僕の服の裾をつかむ様子を見ると、思わず守ってあげたくなる。

「とっ父さん、母さん、あんまりいろいろ聞いちゃかわいそうだよ」

「あっ、そうだな」

「ゴメンね? 由月ちゃん」

2人に謝られ、由月は無言で首を横に振った。

「ちょっとびっくりしただけよね?」

伯母に頭を撫でられて、ちょっと表情がゆるんだ。

やっぱり緊張してたんだな。

「そっそう言えば、由月は何番目の子供なんですか?」

「あっ、言ってなかったわね。由月は6番目の子よ。今は小学1年生なの」

…6番目の子?

そして小学1年生?

……と言うことは!

僕は勢い良く振り返った。

「なっなに?」

びっくりした顔も可愛いな〜。

じゃなくて!

「由月って………男の子?」

「は?」

瞬時に由月の顔が険しくなった。

「アンタまさかっ! オレのこと、女だって思ったのか!」

胸倉を掴まれるも、動揺している僕は抵抗できなかった。

四人の大人達も、ポカーンとしている。

えっ? もしかして由月が男の子だって気付いていなかったのって、僕だけ?

「だっだってキミ、浴衣着ているし、髪長いし…」

「どこが長いんだよ!」

「まっまあ男の子にしては、少し伸びているわよ。だから夏休み前に、髪を切りましょうって言ったのに」

伯母がフォローのつもりで言った。

「それに名前だって何だか女の子っぽいし、ウチの両親もちゃん付けで呼んでたし…」

「えっ、だって…」

「幼い甥っ子ですもの。小さい子にはちゃん付けしてしまうのが、大人の悪いクセと言うか…」

さすがの両親も、どこか視線が虚ろだ。

フォローする言葉を、必死に探しているのがバレバレ!

「名前は親父が勝手に名付けたんだ! 浴衣はおふくろが作った!」

あっああ、ご両親の愛情だったんだ…。

でもどっちの要素も、女の子のイメージしか浮かびません(涙)!

「まっまあまあ。落ち着きなさい、由月。子供のうちは性別が分かりにくいことなんて、いくらでもある。現に雅子だってお前ぐらいの歳の頃には、しょっちゅう男の子に間違えられてたんだぞ?」

「そう言う雅月兄さんは、高校生になるまで女の子に間違えられていたわね」

「おまっ、それを今ここで言うか!?」

…ああ、嫌な血の受け継ぎ方だなぁ。

どうやら由月は物の見事に、伯父の血を濃く受け継いだらしい。

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