《MUMEI》

「あの、さっきはゴメン。女の子に間違えちゃって…」

「…別にいい。冷静になってみれば、確かにオレも紛らわしい格好してたし」

「うっうん。…あと、みんなで一緒にご飯食べないの?」

「それはいつものこと。アイツらうるさいし、一緒に食べる気しない」

そうイヤ〜そうな顔で言わなくても…。

「家族のこと、嫌い?」

「キライ…じゃないけど、少し苦手。うるさいから」

「でも伯母さんは優しいよ? まあ子育てに忙しそうだけど」

「弟や妹はまだ小さいから…。母さんに文句はないよ。弟や妹にもね」

…要は父親と姉5人にはあるわけだ。

でも予想はつく。

お父さんは由月を後継者にしたくて、口うるさくなってしまうんだろう。

お姉さん達は…しょうがないとしか言いようがない。

女性は大家族だと、気が強く育つって何かで聞いたことあるし。

「じっじゃあさ、僕と一緒に食べるのはどうかな?」

「アンタと? 何で?」

「えっと…お姉さん達のことでは同感としか言いようがないんだけど…」

「ああ。アイツら、ここから出たことないから、都会から来たアンタが珍しいんだろうな」

「うん、そうみたい」

さっきのことを思い出すと、少しうんざりしてしまう。

「…まっ、別にいいよ」

「えっ、ホント!?」

「アンタ、長くいる予定?」

「とりあえず夏休みいっぱいはいる予定だから、1ヶ月はいるかな?」

「そのぐらいなら、オレも平気だから」

「ありがとう! じゃあ早速お夕飯持って来るね!」

僕は意気揚々と部屋を出た。

夜の屋敷は怖いけど、明かりで人のいる所が分かるのは良いな。

戻る中、僕はそう思った。

でもふと、何でこんなに嬉しい気持ちになっているのか、不思議に思った。

あのうるさい人達から逃れられるから?

それとも…由月と一緒にご飯を食べられるから?

…そのどっちのような気がする。

由月とは恋人にはなれないけれど、良い友達で良い従兄になりたいと思った。

どうやら伯母が言った通り、少しは僕に興味を持ってくれているみたいだし、手ごたえはある!

僕は笑顔で広間に戻って、伯母に由月と今後一緒に食事することを決めたことを伝えた。

すると伯母は目を真ん丸くした。

「あらまあ…。本当に雅貴くんのことを気に入ったのね」

まあ多少はお姉さん達の同情もあるだろうけど、そこは伏せておいた。

「ありがとう。でも御膳は重いから、わたしも手伝うわ」

「ありがとう!」

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