《MUMEI》

僕は答えを出せないまま、由月と夏休みを過ごした。

由月はいつも夏休みは昼・夜逆転の生活を送るらしいけど、僕の相手をする為に朝から起きる生活を続けた。

相変わらず食事は僕と2人っきりだけど、外へ遊ぶことも多く、伯父と伯母は安心しているようだった。

母はどうやら言いたいことをすっかり言い尽くしてしまったらしく、大人しく田舎生活を送っている。

父は田舎が珍しいらしく、伯父にいろいろ聞いたりして、楽しんでいた。

僕は山で遊んだり、川で遊んだり、畑で野菜や果物を取って食べたりと、田舎を満喫した。

その中で思ったことだけど、由月は別に周囲の人間に苦手に思われているワケじゃないみたいだ。

独特な雰囲気と、ちょっと気難しい性格のせいで、近寄りがたいと思われているらしい。

まあ僕もちょっとそう思うけど、話してみれば親しみやすいし、優しい。

一緒にいて楽しいと思える。

由月みたいなタイプ、今まで周りにいなかったせいか、ずっと側にいて、彼のことを知りたいと思った。

夏休みも半分を過ぎる頃には、僕は彼の部屋で寝泊りするほど、仲が良くなった。

3歳の歳の差なんて感じないぐらい、僕と由月は親しくなっていった。

だけど…楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、終わりを迎える。

最後の日、お昼には帰ることになった。

けれど由月は起きてこなかった。

朝、僕が起きる頃にはまだ布団で寝ていた。

時間も早かったし、僕は声をかけずに部屋から出た。

荷物はすでに玄関先に置いていたし、このまま帰ることは可能だけど…。

僕は出て行く前に、由月の部屋に向かった。

「由月? 起きてる?」

襖の前で声をかけるも、返事は無い。

そっと開けて見ると、まだ布団の中だった。

「由月、入るよ」

声をかけて、中に入る。

由月の背中を見ながら、座った。

顔は隠していて、様子が分からない。

でも起きてはいるみたいだ。

「由月…。僕は帰るけど、また来年の夏休みに来るから」

「…冬休みは来ないのか?」

返事をしてきたことに驚いた。

「うっうん。冬休み、ウチの学校短いんだ。それに父さんの実家に行かなきゃだし…。こっちは大雪が降るみたいだから、行くのも帰るのも大変みたいなんだ」

…自分で言っててなんだけど、言い訳がましいな。

「…確かに雪はヒドイからな」

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