《MUMEI》

そう言って由月はゆっくり起き上がった。

「来年の夏休み、絶対にウチに来る?」

不安げに揺れる眼で、僕を見る。

「もっもちろんだよ! 両親を説得してでも、必ず来るから」

「そっか…。なら良い」

そう言った彼は、少し微笑んでいた。

「あっ、そうだ。ケータイ持ってる?」

「うっうん」

両親が共働きで側にいてくれることが少ないので、携帯電話は持たされていた。

「ちょっと貸して」

「うん、どうぞ」

由月は僕の携帯電話を受け取ると、素早く操作した。

「―よし。オレのケータイ番号とメアド、それにパソコンのメアドも入れといたから」

「あっありがとう」

手馴れているなぁ。

パソコンもそうだけど、彼は機械に強いみたいだ。

「オレは基本的にヒマだから、いつでも連絡して」

「うん! 必ずするよ!」

「じゃあ、約束」

由月は小指を立てて出した。

「うん、約束。必ず連絡するよ」

僕は自分の小指を絡ませた。

そして彼を部屋に残して、僕は邸を出た。

絶対に来年も彼に会いに来ようと、心に決めて。

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