《MUMEI》 距離的にはそんなに遠くないのだが、急斜面がキツイ。 整備されていない山道を歩くのは、ここに来なければまずないことだ。 草むらのキレイそうな所まで移動して、腰を下ろした。 「ぷは〜。…しんどかった」 座ると気付いた。 …やっぱり汗臭い。 滝のように雨のようにダラダラ垂れてきているのだから、しょうがないのだが…。 この体でコムラに会うのは、やっぱり気が引ける。 スイカを渡して、そのまま帰ろうか。 あの小さな女の子も食べるのなら、自分がいなくても平気だろう。 「あれ? キミ、昨日の女の子?」 「えっ?」 再び声をかけられ、わたしは顔を上げた。 後ろに、黒尽くめの少年がいた。 歳はコムラと同じくらいか、彼の方がわずかに上か。 にっこり笑うも、背筋に冷たい汗が流れた。 …何だろう? 悪寒? しかし別におかしなところは見受けられない。 一見は。 「あなたは?」 「ああ、俺はキムロ。コムラの古くからの知人」 コムラの名前を簡単に言った。 わたしと彼が知り合いだということを知っている? つい昨日のことなのに? 前へ |次へ |
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