《MUMEI》 「…本当にコムラの知り合いなの?」 「もちろん。じゃなきゃ、キミのことは知らないハズだよ」 そう言ってしゃがみこみ、わたしと視線の位置を合わせてきた。 「にしても…」 ふと真面目な顔になり、キムロはわたしの顔をじっと見た。 「なっなに?」 「う〜ん。…キミは普通の人間か?」 「はあ?」 どこか普通じゃないように見えるんだろうか? 思わず自分の体を見回した。 「この森で、平然としていられる人なんて珍しいんだよ。しかも『俺達』とも普通に出会えてる」 「…あなた達と出会えちゃいけないの?」 「うん。普通は、ね。出会わない方がいいに決まっている」 その言葉に頭にかっと血と熱が上がった。 「イヤよっ! 出会わない方が良かったなんて、そんなことない! 絶対にない!」 「言い切るね。若い証拠だ。でも…」 キムロはスッと手を伸ばし、わたしの顎を掴み上げた。 そんなに強い力じゃない。 けれど…手が異様に冷たい。 「『俺達』の正体を知って、それでもなおその言葉が言えるなら、俺はキミを歓迎するよ」 「…つまり、今のところは歓迎していないのね?」 「不用意に近付いてきた人間―としか思っていないことは確かだね」 そう言って、にっこり微笑む。 前へ |次へ |
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