《MUMEI》

ここに来ると女性よりも肌が白いので、弱く見られているだろうな。

「逆にオレは焼けやすい。ちょっと陽の下に出ただけで、すぐ焼ける」

確かに彼はいつも焼けていた。

なのに引きこもっているのだから、体質なんだろう。

「あっ、そうだ。ねぇ、川釣りを教えてくれないかな?」

「川釣り? 良いケド、何でまた?」

「父さんと伯父さんがあんまりに楽しそうにやってるから。僕も川魚好きだし、自分で釣ってみたいと思ったから」

「いいよ。じゃあ明日の朝にでも行こうか」

「うん!」

…ごっ誤魔化せたかな?

彼の触れた腕の部分が、とても熱かった。

彼の体温は確かに高いけど、別の意味で熱い気がした。

会う度に胸が高鳴る。

一緒にいて、ときめく。

その気持ちに名前を付けるのは、躊躇われた。

だから僕は隠すことにした。

彼に会うのはとても嬉しいし楽しい。

でも同じぐらいの強さで、苦しくて辛くなってきているのを、感じていた。

それは年月を重ねるごとに、重く深くなっていった。

「そう言えばさ」

「うっうん」

「オレ、コクられたんだ」

「…えっ?」

由月は何でもないような顔をして、軽く言った。

「隣の中学の女の子に。同い歳だったかな? 学校の交流会でオレを見て、一目惚れしたとかで」

「へっへぇ〜」

田舎の子供とは言え、やっぱり女の子はやる時はやるんだな…。

僕には無い行動力が、少し羨ましい。

「でも断った」

「断ったの?」

「ああ。だって何だかうるさそうだったし。そういうのは身内で充分」

険しい表情で言うところを見ると、相変わらずお姉さん達との関係はよろしくないらしい。

「雅貴こそ、彼女できた?」

「えっ? いや、できないよ。オレみたいな草食系なんて、あんまり好かれないし」

「でも告白ぐらいは受けたこと、あるんじゃないの?」

彼はイタズラ心を出し、ニヤニヤしている。

「そっそれは…」

全く無い、とは言えない。

何故か年上に好かれやすいみたいで、先輩から何度か告白めいたことは言われたことはある。

だけど…そのたびに、由月の顔が浮かんでしまう。

勿体無いと友達に言われつつ、断ってきた。

「まっまあ彼女なんていないよ! 今は高校入学したてて忙しいし。由月だってそうだろ?」

「まあな。ちょっと勉強がヤバイかも。雅貴、後で教えてよ」

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