《MUMEI》

「や、やっと着いた…。」


案内板を見て、ナースに聞きながら、やっと俺は目的の場所に近づいた。

「何でこないに方向音痴なんや俺は。」


くたくたになりながら歩いていると、曲がり角の向こうから話し声がした。


「大変申し訳ありませんでした。」


―阿騎?


聞き覚えのある声に、そっと角から様子を伺う。
見ると泣いているおばさんをその息子さんかと思われる人が肩に手を置き、なだめている。


―なんか、来たらあかんかった感じ、か?


そっと離れようとしたとき、


「先生は優秀なお医者様なんでしょう!?どうして家の人は助けられなかったんですか!」


切実な叫びが耳をうった。


「医者なんて人殺しよ!!」

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