《MUMEI》

泣きながら叫ぶ女性を、男性は必死に諫めている。


「仕方ないよ、父さんは癌だったんだから。すみません、先生。」


「いいえ、当然のことです、此方こそ至らず…大変申し訳ありませんでした。」


そうして阿騎は深く腰を折って頭を下げた。


「さぁ、母さん、あっちで少し落ち着こう?」


そうして二人は病室から離れていった。

二人が見えなくなるまで、阿騎は決して顔をあげなかった。


俺は阿騎の日々向かっている仕事の重さを痛感した。


「やっぱり何時でも堪えるな、この時は…。」


顔を上げて、ポツリと漏らした阿騎の呟きと苦笑に俺は切なくなった。

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