《MUMEI》

でもその願いはすぐに叶った。

学校が夏休みに入ったので、伯父の家に来たのだ。

だけど…。

<がっしゃーん>

「えっ?」

家の中からは、物凄い物音と声が響いてきた。

「っのクソ親父!」

「私がクソ親父だったら、お前はクソガキだっ!」

「…このやり取り、兄さんと由月ちゃんね」

「母さん、止めた方がいいんじゃ…」

「ああ、そうね」

母は渋々家の中に足を踏み入れた。

僕と父も、後に続く。

広間で由月と伯父が大喧嘩をしていた。

伯母やイトコ達は、物陰に隠れて様子を見ている。

「雅貴は由月ちゃんを止めて。アタシは兄さんを止めるから」

「わっ分かった」

気配を消して、恐る恐る由月の背後に迫った。

母も同じように、伯父の背後に回った。

母と視線を交わす。

お互いに頷き合い、すぐに動いた。

「はい、ストップ! 兄さん、由月ちゃん、いい加減にしてよ」

「由月! 僕達が来たんだから、もう止めなよ!」

僕と母さんは、伯父と由月を後ろから羽交い絞めにした。

「なっ! …雅子か」

「雅貴…」

2人はすぐに力を抜いた。

「まぁたハデに暴れたわね」

母が感心半分、呆れ半分に周囲を見回す。

確かにいろいろな物が破壊され、いろいろな物がボロボロになっていた。

「っ! 雅貴、オレの部屋に行こう」

「うっうん」

由月は僕の手を掴み、歩き出す。

床に落ちている物を避けながら、広間を出た。

廊下を歩いている時、由月は何も言わなかった。

だけど部屋に入るなり、ぐったりと座椅子に座った。

「…お久し振り。そしてどうしたの?」

「ああ、いらっしゃい。…別に。いつものケンカ」

「いや、激し過ぎるから」

あんなのをいつもしていたら、この家はとっくに崩壊している。

由月はむっす〜としながら、腕を組んだ。

「そろそろ親父が後継者の就任式をしたいだなんて言い出したんだ」

「就任式? 早くない?」

「親父は昔の人間だから。14歳で成人だなんて言いやがる」

「ああ…」

中学の時にやった立志式を思い出した。

「由月ももう中学2年だもんね。伯父さん、慌て始めたんだ」

「ああ。イヤだって言っても聞かねーし。ここんとこ、今みたいなケンカが続いてる」

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