《MUMEI》

ぎゅっと細い体を抱き締める。

「だから四年間なんて短いよ。由月こそ、浮気しないでくれよ?」

「するかよ。オレは…雅貴が良いんだ」

由月は強く抱き締め返してくれた。

「再会する時、オレは大学生か。雅貴の身長、追い抜いているな。きっと」

「ははっ、それは怖いようで、楽しみだな」

僕は由月を抱き締めたまま、畳の上にそっと寝かせた。

「きっと体格もよくなっているよ。由月は僕より成長しそうだ」

「その時には逆転だな」

「それはホラ、その時によるよ」

由月に覆い被さり、前髪をそっと撫で上げ、額にキスをした。

「…んだよ。キスさえまともにできなかったクセに」

「それは1年前の話だろう? その時よりは成長しているよ。いろいろとね」

まあ…知識を仕入れたぐらいだけど。

「まさか浮気したんじゃないだろうな?」

途端にムッとする彼が可愛くて、ついふき出してしまう。

「ないない。僕は由月一筋だから」

「どうだか。都会の人間はそういうの、早いって言うし」

「どこで聞いたか知らないけど、僕にはありえないよ。ずっと由月に夢中だったんだから」

頬に唇を寄せると、僅かに身動ぎした。

「大好きだよ、由月。五年後にはキミを守れるぐらい、強くなって帰って来るよ」

「…来年までは、来るんだよな?」

「もちろん。受験生だけど、由月には会いたいからね。勉強ばかりしているだろうけど…」

「構わない。雅貴が側にいるなら、何したっていいし、何をされたって良い」

そんな熱っぽい眼で見つめられると、理性が吹っ飛びそうだ。

相手はまだ中学生だから、自制しようと思っていたのに。

僕は由月に再びキスをした。

何度も弾むように口付けし、時には深く重ねた。

「んんっ…ふぅっ…!」

「由月、由月…! 愛しているよ」

恥ずかしげも無く出たセリフに、自分自身でも驚いた。

でも僕の正直な気持ちだから、由月が相手だから、すんなり出た言葉だろう。

「…例え教師になれなくたって、大学を卒業したら、絶対に来いよ」

「ヒドイこと言うなぁ。僕は絶対教師になるよ。農業は向いてなさそうだしね」

「見てろ。オレが大人になったら、雅貴を養ってやる」

「ははっ。楽しみにしているよ」

僕は手を伸ばし、電気に繋がっている紐を掴んで引っ張り、電気を消した。

カーテンの隙間からもれる月の光だけが、唯一の明かりとなる。

川の流れる音や、虫の音、風の音や木々の揺れる音だけが耳に届く中、僕は再び由月に覆い被さった。

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