《MUMEI》

「なんでお面を持っていないと、最後までいられないの?」

「お祭りに参加していた人に言われたのよ。普通の人間が、このお祭りの最後までいてはいけないって。最後までいたら、食べられちゃうんですって」

「たっ食べっ…! って、誰に?」

「山の神様達に」

どきっと、胸が嫌な高鳴りをした。

何故か―あの三人の顔が浮かんだ。

「昔から両親に、あの山にはたくさんの神様がいるって聞いていたのよ。それこそ鳥や狐、狸が祀られていて、神社も山の中にはたくさんあるって聞いたわ」

「どっどうしてそんなに神社が?」

「さあね。ただ昔の人が信仰深くて、建てたらしいけど…。昔はそれこそお供え物とかたくさん置いてたらしいけど、最近じゃサッパリでしょう? だから神様達は供物をくれない人間を恨み、迷い込んだ人間を食べてしまうらしいわ」

…お腹が減っているのだろうか?

ふとそんな冷静な考えをしてしまった。

……ミトリはスイカに眼を輝かせていた。

だからだろうなと思った。

「でもお祖母ちゃんは助かったのよね?」

「ええ、そのことを教えてくれた人が、こっそり送ってくれたから。本当かどうかは分からないけどね」

そこで祖母は一息ついた。

「昔は神隠しとか多かったらしいし、その人もそれを心配してあえてそんな話をしただけかもしれないしね」

…いや、真実なのだろう。

「お祖母ちゃん、その人のこと、もうちょっと覚えていない?」

「そうねぇ…」

祖母は頬に手を当て、眼を閉じた。そしてしばらくしてから、口を開いた。

「ああ、その人、狐のお面をしていたわ」

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