《MUMEI》

怖い親子の後ろに引っ付いて会場を後にした。

「馬鹿だけど頭は回るようだな。」

にやり、と高校生が俺に笑いかけた。


「それはよく言われるけど、お前はひねくれ者だな。友達になりたいならちゃんと口にすればいいだけなのに。」

二郎にちょっかいばかりかけて、構ってちゃんめ。


「あっは、千秋さん良かったですね。」

綺麗な兄さんに笑われてつられる。


「不利益な者には関わらないように。」

着物の奴はやたら突っ掛かってくる。
その悪態にむかむかする。


「友達って選んで作るんじゃない、俺は知り合って、何かが通じえたら友達だと思う。」


「じゃあ、無理だな。決裂だ。」

うわ、
俺、今、高校生に振られた?


「気に入ってはいらっしゃいますよ。機会があればまたお会いしましょうね。」

綺麗な兄さんに励まされ、颯爽と消えていった。


傷心のまま二郎をトイレに運んで、口の周りを拭いたりうがいをさせる。


「……お見送りしなくて良かったの?」

二郎は襟を寛げて、口の端を拭いながら聞いてくる。


「こんな状態の人間を放って置けと?」

一人で帰れないの自覚しているくせに。


「歩けるよ、さっきの綺麗な人に漢方薬貰って飲んだんだ。」

二郎は何故かむきになっている。


「こんな妖艶なの置いてくほど馬鹿じゃない。」

二郎の二つ開いた釦を一つ閉めた。


「そうやって調子いいんだから!」

今日は酒乱なのか、叩かれた。


「ホントホント、二郎を見る招待客の目が嫌だったんだよ。悪目立ち?ってか、視界にさえ入れてなかったくせに獲物を見るような奴らが気に入らないね。
二郎のこと知ってるのは俺。
二郎と触れ合えるのも俺。
二郎のえっちいの見れるのも俺。
どっか間違ってる?」

黒い着物の奴が二郎を値踏みするみたいな視線にも苛立った。


「……あ、そうか。ヤキモチか。」

目覚めたように二郎が起き上がる。

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