《MUMEI》

 「相っ変わらずうるせぇな」
外から聞こえてくる人々の喧騒
普段から聞き慣れている筈のその中に
自身が営んでいる雑貨屋の清掃に勤しんでいたエイジ・グラッドリーは違和感ある音を聞いた
低く、そして鈍く響く鐘の様な音
ソレはその音の影に潜みながら、徐々に近く響いてくる
一体何なのか訝しんでいると
不意に店の戸が開け放たれた
客かと思い、いらっしゃいとお決まりの言葉を言い掛けて
だがその人影は、無言で入ってきたかと思えば
エイジへと向け持っていたらしい何かを唐突に振り下ろす
何事か状況理解が即座には出来なかったが
取り合えずは危険な状況である事を把握し
身を翻しそれを何とか避ける
振り下ろされた何かは勢いを衰えさせる事無く
店内にある棚を爽快にブチ壊していった
けたたましい音が外にまで響き、そして中のモノが崩れていく
「……随分な挨拶だな。申し訳ないがお前に襲われる覚えが全くないんだが」
相手を睨めつけ、だが口調はまるで親しいものとの談笑を楽しむ様なソレでだ
だが相手からは反応がなく、唯々其処に立ち尽くすばかりだった
「全ての鐘を鳴らす事が出来れば、世界を壊す事が出来る」
「は?」
「……此処に、鐘はない。何所か、別の場所」
一人言に呟き、少女はその場を後にした
後に残されたのは目も当てられない程に破壊された部屋
片付ける事が面倒だと、深々溜息を吐く
「……先生。これ何の騒ぎ?」
暫く途方に暮れ、立ち尽くしていると背後からの声
声の方へと向いて直れば
少女が一人、そこに立っていた
「……先生。昨日、この部屋掃除したの」
エイジを先生と呼びながら
すっかり散らかってしまっている室内を見回しながら溜息をつく
「……片付ける、から」
少なく呟いて少女が掃除を始め
手際のいいソレを眺めながら、だが栄治は途中ソレを止めていた
「ルカ、ここの掃除は後でいい。それより腹が減ったんだが」
何か作っては貰えないか、とのエイジ
少女・ルカは頷く事をすると片す手を止めそして台所へ
向かう背を見送り、栄治は改めて店内を見回す
散々なあり様に、だが愚痴った所でどうなる訳でもなく
エイジは片付けに手を動かし始めた
片付けを始めて暫く後
店の戸が、また微かな音を立てて開く
現れた客はまだ幼さが抜けきっていない少年
その容姿はパッと見、少女かと見間違うほど可愛らしいソレをしている
「……何か用か?小僧。生憎と、今日は臨時休業なんだが」
大儀げに行ってやり、だが相手からの反応はない
ただ其処に立っているばかりの相手へ怪訝な顔をして見せれば
「……鐘を、探しに行く。アナタも来て」
「アイツにだけは、渡せない、から」
解らないその答えにエイジは怪訝なソレで
だがそんなエイジを気にするでもなく、その少年は腕を掴んで引いて行く
「ちょっ……待て!テメェ一体何モンだ!?」
突然すぎるそれに若干慌てる様に問うてみれば
だが少年は問われる事がさも意外だと言わんばかりの顔
中々成立しない一方的な会話に苛立ちばかりが募る
「……僕はアリス。アリス・ファルマン」
その苛立ちが伝わったのか、相手が唐突に名を名乗る
そしてどうしてか、エイジへと懐に忍ばせていたらしい懐中時計を突き付けてきた
一体それが何を意味するものなのか
当然解る筈もなく、相手へと怪訝な顔をして向けて見れば
「……あともう少しで、世界は終わる。あいつに、壊される。それは、止めるべき」
物騒な事を唐突に口走る
行き成りなソレに、エイジの表情に困惑気なソレが浮かんだ
「僕の言ってる事が解らないって顔してるね」
「……申し訳ない事に、真さっぱり解ってない」
はっきり言って返せば、相手はあからさまに溜息をついて見せ
そして仕方がないといった様子で語る事を始める
「……言葉通りの意味なんだけど。早く手を打たないと手遅れになる」
脅す様な言葉を続けるアリスへ
詳しい事こそやはり知る事が出来なかったにしろ
真剣なアリスの様に、それが嘘・狂言の類には思えなかった
「で?結局のところ、テメェは俺に何を望む?」
厄介事に首を突っ込んでしまいそうだと感じながら
それでも一応は問うてみれば
途端にアリスの顔が不敵に緩む

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