《MUMEI》
それからの日々
わたしは良く山へ行くようになった。

山に行く時は何かしら差し入れを持って。

ミトリはわたしを気に入ってくれたようで、いつもコムラと一緒に待っていてくれた。

キムロはとても気まぐれ。

自分の来たい時に来て、帰る時も勝手に帰る。

何日も一緒に過ごした。

そしてコムラがある日、湖に連れて来てくれた。

わたしが来たがっていたことを、覚えていてくれたのだ。

でも水羊羹の差し入れが必要だと言っていた。

だから水羊羹を持って、わたしは湖に来た。

…何でもここの社の住人が、水羊羹が大好物らしい。

湖は丸くて大きかった。

湖の真ん中に、小さな社があった。

そして湖と土の間に鳥居があり、そこから土の道が伸びて、中心部へ繋がる。

わたしとコムラとミトリは、水羊羹を持って鳥居をくぐった。

「―ここにいるのはミオって言ってね。結構気難しい性格なんだけど、水羊羹をあげれば機嫌良くなるから」

水羊羹の好きな神様、か。

―うん。悪い気はしない。

やがて社の前に来ると、コムラとミトリは足を止めた。

「りん。悪いけど挨拶は一人で行うのが決まりなの」

「ボク等がいるから危険は無いと思うけど…一応、気をつけて」

…コムラ、注意したいのか怖がらせたいのか、分からないよ。それじゃあ。

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