《MUMEI》

「はい、お供え物」

やっとわたしは水羊羹を渡せた。

祖父と祖母、実は永久村では一番の権力を持っている。

と言うのも元々、祖父の家が代々永久村の村長だからだ。

今は祖父の甥、つまりわたしにとっての叔父が村長を務めている。

駅に近い所に家を建て、そこに叔父一家は住んでいる。

そのせいかおかげか、贈り物がやたらと多い。

祖父と祖母の家にもおすそ分けがしこたま送られてくるので、コムラ達への差し入れはそこから来ている。

…ちなみに叔父ではなく、祖父と祖母の権力が強い理由は、叔父は村のアピールの為に外に出ていることが多く、二人は村の相談役みたいになっているからだ。

だから人望も厚い。

貰い物―主にお菓子などを差し入れすると喜ばれた。

今日は老舗の水羊羹の詰め合わせセット。

ミオはバリバリと包装紙を破り、箱を開けて笑顔になった。

「おおっ! 香楽の水羊羹ではないか! まだあったんだな」

…ミオ達が言うと、歴史を感じるなぁ。

ミオは小倉のカップと備え付けのプラスチックのスプーンを取った。

そしてフタを開け、食べ始める。

「ん〜〜〜! 何十年経っても変わらぬこの味! 生きてて良かったわい」

「そっそう…。喜んでもらえて良かったわ」

「ミオ、りんは湖で遊びたいんだ。良いよね?」

コムラが真面目な顔で言うと、ミオはこっちを見ないまま。

「好きにせい」

…上機嫌で答えた。

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