《MUMEI》
永久の夏
「ふぅ…。四年ぶりだと、距離が遠く感じるなぁ」

「アタシは毎年思うわよ」

「まあまあ。後少しだし、2人とも頑張って」

僕は四年ぶりに、この土地に足を踏み入れた。

季節は夏。

この春、僕は無事に大学を卒業した。

もちろん、念願だった教育免許を取得して。

そしてこの土地の小学校に、赴任することが決まった。

けれどいろいろバタバタしていて、結局夏になってやっと来れた。

「荷物は先に届いたかな?」

「多分ね。でもあんまり量がなかったわね」

「義兄さんが揃えてくれるって話だし、必要なかったんだろう」

そう、僕が赴任できたのは、伯父の力も影響している。

この土地には若い先生がいないから、僕がこっちで働きたいと言った時には大喜びしてくれた。

だから身一つですぐに来いと言われたけれど、さすがにそれはと思い、いろいろ準備をして今日来た。

「兄さんに何か気に食わないことを言われたら、すぐに連絡すんのよ。あの人、歳を取ったせいで余計に頑固になっちゃってるから」

「その…由月のことでも?」

「由月ちゃんのことは、もうそろそろ諦めが入っているわよ。二番目のコがもう継いでいるようなもんだし」

二番目の従姉は伯父と争ってても埒があかないと悟ったらしい。

最近では後継者のような働きをしている為、周囲の人間は二番目の従姉を後継者にと言い出しているみたいだ。

「由月ちゃん、大学生になってから、かなり大人になったわよ。アンタ、成長追い抜かれているわね」

「うっ…。それは怖いような楽しみなような…」

時々由月の写メが送られてきたけど、見るたびに大人っぽくなっていった。

逆転は…本当にありえるかもしれない。

四年前までは一応僕がアレだったけど…元々由月の方がしっかりしているしなぁ。

「それにとってもカッコ良くなったの! もうここら辺の女の子は、由月ちゃんに夢中よぉ」

…それでも『ちゃん』付けは直らないんだね、母さん。

僕は四年ぶりに会うことが、楽しみで怖かった。

最後に会った時、まだ中学生だった。

彼は子供だった。

最後の年にはずっと甘えられた。

引っ付いて離れなかったと言っても過言じゃないぐらい。

外にもほとんど出ず、部屋の中ばかりで過ごした。

部屋の中では…親には言えないことばかりしていた。

…お互い、受験生だったのに。

今思い出しても、顔から火が出そうだ。

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