《MUMEI》

邸に着くと、伯父と伯母が出迎えてくれた。

相変わらずの大家族。

でも今日からは僕の家になる。

「よく来てくれたな、雅貴くん」

「今日からよろしくね。自分の家だと思って、ゆっくり甘えてくれていいから」

「ありがとうございます。伯父さん、伯母さん」

僕は2人に頭を下げた後、由月の部屋へ向かった。

しかし、足取りは重い…。

自分より成長することだろうとは予想していたけれど、あっあんまり変わっていると、ショックだな。

僕の中では、由月はまだ幼くて可愛い存在だったから。

でも…男の子は成長するもんだしなぁ。

あっ、何か涙出てきたかも…。

フラフラしながら由月の部屋の前に来た。

僕の部屋は由月の隣にしてもらった。

けれどちょっと失敗だったかな?

成長した由月に迫られては、逃げようが無い気がする。

「―何つっ立ってんだよ? 雅貴」

すっかり声変わりをした由月の声が、襖越しに聞こえてきた。

「相変わらず、足音だけで分かるんだね。由月」

僕はそう答えて、襖を開いた。

部屋の中はあまり変わっていなかった。

けれどそこの住人は大分変わっていた。

立派な一人の青年に成長していた。

分かっていたことだけど…。

「寂しいもんだね…」

「何がだよ?」

黒い浴衣を着ている由月は、すっかり昔の面影は無かった。

最近の言葉で言うと、肉食系の野性味のある青年へ成長してしまったのだ。

「僕の可愛い由月が、こんなに立派になるのがだよ」

「だれが可愛かったんだよ! 相変わらず変なこと言うヤツだな」

ムキになりやすいところは変わっていない、と。

「雅貴はあんまり変わってないみたいだな」

「最後に会った時、僕はもう18歳だったからね。アレから少しぐらいしか成長していないよ」

身長ももう止まってしまったし、今では彼の方が高いだろう。

「まっ、今日からよろしく。約束通り、ちゃんと教師として赴任してきたから」

「ああ、本当に守ったんだな」

「言ったろう? 僕はキミを守れるぐらい強くなって、ここに戻って来るって」

「お前の可愛い由月じゃなくてもか?」

「外見は変わっても、中身は可愛いままだよ」

「お前…言うようになったな」

「多少、強くなっただけだよ。でも…」

僕はゆっくりと彼を抱き締めた。

「四年間の我慢はさすがにきつかったかな」

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