《MUMEI》
幸せな時間
僕がにっこり笑ってそういうと、悠一はさらにきつく抱きしめてくれた。僕にとってそれは初めて感じる人の温もりで、とても心地よかった。




「…梨央、そろそろ帰るか?」

「あ、うん。そうだな!」

「じゃ、行くか〜」




悠一は、そういうと同時に僕を抱き上げた。所謂、お姫様抱っこというやつである。




「ちょっ!何してんだよ!下ろせよ!!」

「お前軽いな〜。ホント細いし。ちゃんと飯食ってっか?食わねぇと、細いうえにチビのままだぞ?」

「人の話聞けよ!ってか、チビじゃないし!!」

「あぁ?チビだろ。お前、身長何センチよ?」

「…148p」

「…チビじゃん」




あぁ、もう!分かってるよ!!分かってますとも!!僕が同い年の子の平均身長にまったく届いてないことなんて!
でも、僕はやっぱり意地をはっちゃうんだよね。




「そ、そんなことないもん!!」

「俺、179pあるし」

「お前は男だろーがぁ!!」

「そう怒んなって。ちっこい方が可愛いぜ?」

「そんな嘘いらないっ!」




梨央は不貞腐れてそっぽを向いてしまった。
まったく、こういう仕草も子どもっぽいっていうのにな。



「うん。嘘かもな。梨央だから可愛く見えるんだった」

「…バカ」

「バカ言うな」

「…アホ」

「意味的には何も変わんねぇな。……さ、着いたぜ」

「ん。ありがと」

「じゃ、おやすみ。梨央」




そう言って去り際に悠一はキスを一つしてくれた。僕は触れた唇にそっと触れた。まだ感触が残っている。
かぁぁぁっと顔が一気に火照っていくのを感じ、僕は直ぐに布団に潜ったが、その日はなかなか眠りに付けなかった。





―――‥


一方悠一は…



「あ〜、何であんなことしちまったんだ俺!!明日どんな顔して会えばいいんだよ!!ってか、恥ずかしいこと言いすぎたぁ〜〜!!」




自分の行動に今更照れていました。

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