《MUMEI》 一人、部屋の中で部屋の電気を消し、窓際に寄り掛かった。 蚊取り線香の煙が夜風で部屋に流れる。 わたしは寝巻き用の浴衣を着て、朝顔柄のウチワで自分を扇ぐ。 …もうすぐ、お祭りの日だ。 そのお祭りは人間が参加してはいけない祭り。 もし迷い込めば、山の神様達に食べられてしまう。 ―覚悟。 覚悟はもう…出来ていた。 きっとコムラと出会った時から。 彼等の冷たい体温に触れた時には、決心がついた。 網戸向こうでは、蛍が見えた。 けれどアレは本当の蛍だろうか? もしかしたら山の神様かもしれない。 思わず笑みがこぼれた。 …明日、コムラに伝えよう。 祭りに参加したい、と。 前へ |次へ |
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