《MUMEI》
伝える気持ち
翌日、冷えた桃を持ってコムラの神社へ向かった。

すでにキムロとミトリが来ていたけれど、わたしは二人にコムラと話がしたいことを伝えた。

二人はニヤニヤしながら、森の中に消えた。

わたしは社の中で眠っているコムラの元へ行った。

コムラは穏やかに眠っていた。

わたしは彼の隣に座り、その寝顔を見つめていた。

…何だかコムラと最初に会った日のようだ。

わたしがここへ迷い込んだのは…果たして偶然か、運命か。

ふと、キツネのお面を見た。

このお面をかぶれば、わたしも彼等と一緒に見られるんだろうか?

そ〜っと手を伸ばし、お面を持った。

そして付けてみる。

「うっうん…」

そこでちょうど良く、コムラが眼を覚ました。

そしてキツネのお面をかぶっているわたしを見て、ぎょっとした。

「わっ、りん!? どうしたの?」

「おはよう、コムラ。お寝坊さんね」

わたしはクスクス笑いながら、お面越しにコムラを見た。

「どお? こうすれば、わたしもあなた達と同じように見られるのかな?」

「りん…」

コムラは起き上がり、わたしの頭を撫でた。

その優しさに、涙が溢れてきた。

…もうすぐ夏休みが終わる。

わたしは、帰らなければならない。

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