《MUMEI》

でもその前に、やりたいことがあった。

「…ねぇ、コムラ。わたし、最後にここでやりたいことがあるの」

「何?」

「あなた達のお祭り、わたしも行きたい」

ぴたっ、とコムラの動きも表情も固まった。

「りん、それは…」

「無茶なお願いだって言うのは分かってる。でも少しでも長く…あなた達といたいの」

この森で、わたしはたくさんの者と知り合った。

そして仲良くなった。

だから…わたしは決心したのだ。

「…危ないよ?」

「分かってる。食べられちゃうのよね」

「なら…」

「でも行きたいの」

ワガママだって分かっていた。

けれどわたしの意思は変わらない。

コムラはしばらく黙っていた。

長い長い沈黙の後、わたしと眼をそらしたまま、顔を上げた。

「…分かった。ちょっとだけなら」

ほっとした。

コムラの優しさにつけ込んだ、意地の悪いことだって分かっていた。

分かっていても…止まれなかった。





その後、ミトリとキムロを呼び戻し、わたしの意思を伝えた。

ミトリは危険だと猛反対したけれど、キムロはおもしろそうに笑っていた。

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