《MUMEI》
祭りの夜
わたしは祖母にもらった浴衣を着て、山の麓でコムラを待っていた。

「お待たせ」

コムラが浴衣姿で来た。

彼の白い肌に、紺色の浴衣が目立っていた。

「りん、浴衣姿可愛いね」

「ありがと。コムラも似合ってる」

わたし達は微笑み合った。

「あっ、そうだ。コレ」

コムラはキツネのお面をわたしに差し出してきた。

「着けてて。ボクの力が入っているから、このお面を着けているうちは、りんが人間だってバレないから」

「…ありがとう、コムラ」

そしてゴメンなさい。

「それじゃ、行こうか」

コムラが手を差し出してきたので、わたしはお面を着けて、彼の手を握った。

「キムロとミトリは先に行ってるの?」

「うん。りんにとって、危険なヤツもいるからね。先に見に行ってる」

「今日は全員集まるの?」

「一応は。後は年末、年始ぐらいかな」

「ウチの親戚もそうよ」

お面の中でクスっと笑うと、コムラは困り顔でわたしを見た。

「今日のこと、誰かに言った?」

「言ってないわよ。浴衣の着付けは教えてもらってたから、一人で着れたの。どこかおかしい?」

「ううん、ちゃんと着れてる。可愛いよ」

「ふふっ。嬉しい」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫