《MUMEI》
発見したが最後、わたしと彼は…!?
ガラッと教室の引き戸を開ける。

「きゃっ!」

「おっと…」

「………」

サーッと血の気が下がる音って、本当に聞こえるんだ…。

などと感心している場合じゃなかった。

わたしはすぐに引き戸を閉める。

すると二分後ぐらいに、さっき見た女子生徒が顔を真っ赤にして、出て来た。

「…ゴメンなさい」

いや、あなたに謝られることじゃないんだけどね。

でも彼女はすぐさま去ってしまった。

わたしはため息をつくと、改めて教室に足を踏み入れた。

「時と場所は選びなさいよ。教室でイチャつこうなんて考えは、中学を卒業した時には捨てなさい」

「委員長、相変わらずあったまかったいな〜。性欲っつーのは、急には止まれない。車と同じだな」

「全然違うでしょ! アホな例えをすなっ!」

教室の床に座り込んでいる男の頭を、情け容赦なく殴りつけた。

ゴンッ!

あっ、良い音。

拳で殴ると、やっぱり違うわね。

「いってぇっ!」

「仮にも中身が詰まっているだけあるわね。良い音したわ」

「オレの頭はスイカかよ」

「まあ似たようなもんじゃない?」

教室の床に座り込んでいるのは、高嶺(たかみね)広喜(ひろき)。

わたしのクラスメート。

同じ歳の高校二年生。

彼はとにかく目立つ。

日本人とアメリカ人の血が混じったクオーターで、体格や行動が日本人離れしている。

そのせいか、言い寄る女の子は日々絶えない。

そして彼は、その女の子一人一人の要求に応えた。

キスしてほしいと言われれば、キスする。

付き合ってほしいと言われれば、付き合う。

…まあ何股かけているのか分からないが、言い出す女の子も暗黙の了解というヤツだろう。

よく体が持つな、と呆れ半分・感心半分。

彼いわく、

「女を泣かせるような女は、男じゃねーな」

…だそうで。

いわゆるフェミニストってヤツだろう。

そこに肉食系とやらを足すと、彼になる。

「…厄介な存在ね」

「何か言ったか?」

未だに頭を押さえ、涙目になっている彼を見て、二度目のため息をついた。

「早く制服着直しなさいよ。みっともない」 

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