《MUMEI》 わたしは恐る恐る舌を差し出す。 すると彼は嬉しそうに眼を細めて、強く吸ってくれる。 「んんっ、うふぅっ…!」 気持ちイイ…! キスってこんなに気持ちの良いものだったの? 目の前には、彼の整った顔が間近にある。 彼の体から匂う香水や、唾液の匂いでよりいっそう思考が鈍くなる。 わたしの中が、彼でいっぱいになる…! 夢中になる! 目が潤んだせいで、何も見えなくなる。 ただ、彼だけを感じることができる。 唇から、彼と溶け合う感じがたまらないっ…! 「んふぅっ…。あんっ、ふっ」 吐息が肌に触れるたびに、体に甘い痺れが走る。 だけど彼の足がわたしの足の間に差し込まれた時、ふと我に返った。 「えっ…ちょっと」 足はどんどん差し込まれ、わたしの体の一番敏感になっている部分に触れた。 「ちょっと!」 そこでようやく、冷静さを取り戻した。 「何だよ? ここまできて、お預けはナシだぜ?」 「ちょっと待ってよ! ここ、教室でしょうが」 あくまでも小声で怒鳴るも、内心は慌てるどころじゃない! 「その方が燃えるだろう?」 再び耳元で囁かれても、熱くはならない。 「冗談っ…! アンタはムードってものを考えられない、無神経ヤローなの?」 精一杯威勢を張るも、彼の足は以前動いていない。 いやっ、動かされるとスッゴク困るんだけど! 「そんなつれねーこと言うなよ。せっかく二人っきりなんだしさ」 そう言うと彼の手がわたしのお尻を揉み出した。 「うぎゃっ! 何が二人っきりよ! 見回りの先生が来る時間になるんじゃないの!」 彼の腕を押さえるも、構わず撫で続けられる。 しまった! 油断し過ぎた! 飢えた色情魔の暴走を、甘く見過ぎていた! 「それまでには終わらせるから」 「…へぇ。アンタって、早かったの?」 ムッと彼の顔が歪んだ。 「そういうことは、女が言うもんじゃないな」 「言わせたのはアンタでしょう?」 「…さっきから気になっていたんだがな」 「何よ?」 「オレの名前は高嶺広喜だ。『アンタ』じゃない」 「そうね、高嶺。とっとと解放してくれるかしら?」 前へ |次へ |
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