《MUMEI》

「ったく…。さっきまでの色気はどこにいったんだよ?」

「余計なお世話よ!」

わたしはついにキレて、彼の股間を蹴り上げた!

「ぐおっ!?」

「っ!」

自らも多少ダメージのある攻撃だけど、このままじゃしんどかった…。

彼はその場に蹲る。

「情けない格好ね」

「ちょっ、おまっ、その攻撃はないだろ?」

「アンタが悪い!」

そう言って制服のポケットからケータイ電話を取り出し、蹲っている彼の姿を写メに撮った。

「おいっ!」

「わたしにこれ以上、変なことをしないように保険よ。もししたら…分かっているわね?」

ニヤッと笑い、彼を見下ろす。

「ひっでぇ女…」

彼も負けじと笑い返すも、その顔色は白い。

「お褒めいただき、光栄の至り。わたしをそんじょそこらの女と思わないことね」

わたしはそう言って、カバンを持った。

「じゃ、わたしは帰るから。先生が来たら、保健室にでも連れてってもらいなさいな」

にこやかに微笑み、わたしは彼を置いて、教室を出て行った。

「あっ危なかった…」

けれど教室を出た途端、体がふらついた。

体が熱くてたまらない…!

吐く息も甘くて、きっと顔なんか真っ赤だろう。

不覚にも、彼に言い寄る女の子達の気持ちが分かってしまった。

あんなフェロモンの固まりにちょっとでも触れたら、参ってしまうのも当然だ。

「はぁ…」

何とか強気を演じられたけど、明日からどうしよう?

モロあの色気に触れてしまったら、意識せずにはいられない。

だけどダメだ!

これ以上触れたら、ヤケドどころの話じゃない!

<ブンブンっ>と頭を振り、邪心を払う。

好きになる人は、真面目な方が良い。

あんなタイプを好きになってしまえば、あとは泣いて暮らすだけだ!

…彼を好きな、女の子達のように。

わたしはそんな未来はゴメンだ。

確かに…その、キスは気持ち良かった。

何にも考えられず、ただ彼のキスに酔えたあの時のことは思い出すと恥ずかしいのと同時に、体に甘い疼きがよみがえる。

「んっ…!」

思わず内股になる。

今が人気の少ない放課後で良かった…。

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