《MUMEI》

暗い山の中、月の光だけが頼りだ。

コムラは迷わずに歩き続ける。

歩いているうちに、どこを歩いているのか分からなくなった。

いや、山の中なのは分かっているけど…。

「この山はね」

「うん」

「神社を拠点にして、各々領域があるんだ。まあ簡単に言えば、結界だね。そこに踏み込んだ者は、いろいろとあるから」

「ああ…。最初にわたしが来た時のように?」

「うん。あの時、ボクは寝てて結界の作用が出ていなかった。代わりにキムロのヤツがふざけて、キミを迷わせていたんだ。ゴメンね」

「ううん。おかげでコムラと出会えたんだもの。キムロには感謝してるわ」

「…そう言われると複雑だね。キミがこの祭りに参加したいと言い出したのは、ボクらと出会ったからだろう?」

「まあね。でも後悔はしてないわ」

やがて、祭囃子と光が見えてきた。

「りん…。最後に聞かせて?」

コムラは振り返り、わたしをまっすぐに見つめた。

「なぁに?」

「何を考えているの?」

「う〜ん…」

素直に答える気は無かった。

けれどコムラは真剣だ。

「…あなた達のことしか、わたしは考えていないわ」

「ボク等のこと?」

「ええ、あなた達のことよ」

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