《MUMEI》

コムラが人ごみの中から、水色の浴衣を着ているミオを見つけた。

彼女は…魚のお面?を着けている。

「やあ、皆の者」

「こんばんわ、ミオ」

「…ホントに参加しよったか、りん」

ミオがお面越しでも険しい表情になったことが分かった。

「うん、言ったでしょう? 覚悟は出来ているって」

「正気とは思えんな」

ふぅと息を吐いたミオは、背を向けた。

「…気を付けよ。今宵は山の主が参加しておる」

「山の主が!?」

ミトリがぎょっとした声を出した。

「何で!? ここ数十年、参加していなかったのに!」

「気まぐれなヤツだからのぉ。りん、ヤツに見つかれば一発だ。…分かっているな?」

「…ええ」

「なら、良い」

そう言ってミオは人ごみの中に戻って行った。

…きっとミオには分かってしまっているんだろうな。

わたしの覚悟の意味が。

「…ねぇ、コムラ」

「何、りん」

「わたし、山の主様に会ってみたい」

「なっ何を言い出すんだ! りん!」

「大声出さないで、目立っちゃう」

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