《MUMEI》

ぎゅうっと抱き締められた。

「ボク、りんのこと好きだよ」

「わたしもコムラのことが好きよ」

でもわたしの方が先に好きになったことは、まだナイショ。

…恥ずかしいから。

「わたしがコムラのお嫁さんになったら…狐の嫁入りってことになるのかしら?」

「ぷっ…。でもそれ、まずは主に許しを貰わないと、ボクなんて捻り潰されそうで怖いよ」

…あり得るな。

「そうね。まあ嫁入りはまだ先として。まずは…」

わたしはコムラの手を掴んで、立ち上がった。

「神社の修理をしましょ? もうちょっと見た目良くしないとね」

「ははっ…。りんには叶わないよ」

「ふふっ。さっ、まずは掃除ね! 行きましょう!」

外に飛び出ると、暑い日差し。

これからわたしは、この日差しが和らぎ、やがて彩る山の景色を見る。

そして雪化粧になる山を見て、桜が咲き乱れる山を見る。

やがてまた、夏が来て…。

その繰り返しを、ずっと見ていくんだ。

この山の神々と一緒に。

そう考えるだけで、足が浮き立ってしまう。

「さっ! コムラ、わたしと一緒に頑張りましょうね!」

「うん! りん、キミとならいつまでも」

一緒だよ?

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