《MUMEI》

「バカだな広瀬。


せっかく落とす気でいたのに。


タイミングちょい早いんだよ。」



「わりわり…」



「栄二見習え〜。」














……………













今のプレー。


桜井の突破が行われる裏で実は動きがあった。


ポスト上がりから位置を変えた阿久津。


当然、


この時点で阿久津がもといた位置に聖龍の選手はいなくなる。


そこで仕掛ける桜井。


が、


これはあくまでもフェイクの一貫。


本当の狙いは別にあった。


阿久津・桜井の2人が海南の注意を引くプレーをするその影で、


右サイド広瀬は、


阿久津のもといた位置。


この時点では空いている側のポストへと飛び込む。


桜井からのパスを貰う為だ。


しかし、


2枚目を守る千葉がこれに気付き、


パスが貰えるであろう位置までは通さない。


実質、


ここで聖龍の策は潰れていた。


が、


そのプレーに遅れて気付いた古賀はそちらに気を取られ、


結果、


桜井の突破を許すことになった。


多くの観客からは単なる突破に見えていたプレーも、


裏では熾烈な読み合いが繰り広げられているのだ。














……………













「栄二ならもっとさー...」



「ピッ!!」



審判の笛が鳴る。



「リスタート来てる!!」



「おっ…つ…」



すぐにディフェンスの形を作る聖龍。


海南、


リスタートは通らず。



(さっきより展開はぇぇな…)



リスタートは通らないが、



(そこまで甘くはないか…)



ボールは海南。

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