《MUMEI》
先輩。
三つ下の後輩は人間関係に不器用だが、その純朴さで現状を保っていられているようだ。

新人自体が久し振りのウチに、孫のような歳の新入社員が出来て皆、我が子のように可愛がった。
……ので、叱るのは俺の役だ。
外回りから、雑務まで付きっきりで教えている。

「安西、もしかしたら好きな奴出来たろう?」

コソコソしてると思っていたら、首筋にキスマークがある。
首に指を指すとお茶を飲む喉元が引きつった。


「はい。」

正直者だ。


「酔ったらお前の家泊めてもらえたの便利だったんだけどな。」


「あ、引っ越しました。」


「お前まだ一ヶ月しか経ってないぞ!彼女と同棲か!」

童貞卒業からの展開が早過ぎやしないか。


「あ、叔父の部屋に一緒に住んでます。」

叔父の……あまり家族の話はしないから新鮮だ。


「仲良いんだ?」


「好きですね。」


「えっ、」

言い回しが妙だから、聞き直したくなった。


「器用な人なんだけど、自分には無頓着で……ぼくみたいなぶきっちょが居たほうがいいみたい。」

なんだよ、俺が付きっきりでないと何も出来ないくせに意外としっかりしているとは。


「そんなこと言ったら恋人が嫉妬するな、その頑張りを俺には見せ付けてくれないのかよ。」


「相手して欲しくて、必死なんです。」


「はは、叔父の恋人かっ。」

眉間を指して休憩を終了した。

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