《MUMEI》

前半16分43秒。


タイムアウト終了を告げるブザーが鳴り、


両チームの選手たちがコートへと戻る。


再開される試合。


盛り上がる観客席。



8対5。



3点のまま止まった試合が、



「ピッ!!」



再び動き出す。



「信じていんだよな?」



ボールは聖龍。



「あ?何が?」



「和也が試合決めてくれんだろ?」



「あぁ…いーよ。
お前らだけじゃ荷が重いだろうしな。」



「ふん。」



鼻で笑う桜井。



「吐かせバカ。」



センターラインを越える聖龍。



「1本行くぞぉッ!!!」



「おぅッ!!!!!」



ヒュッ…!!



ボールを回す桜井。


受け取るのは鈴木。



キュキュッ!!



すぐに仕掛ける鈴木。


タイムアウトを取り一旦の間ができたとはいえ、


試合はあくまでもその前までの延長線上に位置している。


スカイを決められたという事実は消えず、


この場面聖龍は流れを引き戻すことが課題とされる。



ヒュッ!!



試合のペースはあくまでも自分たちの物とする。


強引だがそれが聖龍のスタイル。



(ん…?)



が、



『点を取る』



ということに関してイマイチアクティブな姿勢が伺えない。


細かく1対1を仕掛けながらも、


中に割って入る様子はなかった。



(何だ…?
向こうからしたら状況的に絶対点が欲しい場面のはずなのに…)



その違和感に気付いたのは、



(何か狙ってやがる…)



千葉だけだった。

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