《MUMEI》

そして鼻をつまみ、唇を奪う。

「うっうんん…」

やがて息苦しさを感じてきたんだろう。

アイツの顔が苦しげに歪んできた。

それでも深く口付ける。

「んっんんんっ!」

両手足がバタバタを布団を叩き、やがてアタシの両肩を掴んで押した。

「ぷはっ! はあっ、はあっ…」

「…おはよう。良い目覚めの仕方ね」

「うっ…。おは、よ」

息を切らせていたけれど、アタシを見て、おびえたように体を小さくする。

「なんか、おこって…る?」

「もちろん。アレ、は何?」

アタシは無残な姿の目覚ましを指さした。

かくんっと首が横に曲がる。

「めざま、し?」

「当たり。アンタってヤツは、何で寝惚けると凶暴になるのかしら?」

柔らかな両頬をぎゅうっとつねる。

「うぎゅっ!」

「アレだけ物には当たるなと、アンタと出会って何回言ったかしらね? 毎日の挨拶のように言っている気がしてきたわ」

「ひっひらないっ、おへ、ひらない!」

「知らないのは寝惚けていたからでしょうが! 寝起きがホンット悪いんだから!」

パッと手を放すと、痛そうに頬を擦っている。

「う〜…」

「とっとと制服に着替えて、リビングにいらっしゃい! 朝食、できているんだから」

「うん…。いく」

涙目で頷くのを確認してから、アタシは部屋を出た。

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