《MUMEI》

「ええっ? ちょっとぉ!」

引っ張られて連れてかれたのは、作業部屋。

壁や床に、コイツの作った芸術品が散らばっている。

画材もメチャクチャ。でも片付けると怒るんだよなぁ。

「コレ、みせたかった」

そう言って白い布を外し、見せてくれたのは…一体の天使像。

「えっ…コレって、天使?」

「せいかくには、めがみ。きみがもでる」

「そう…って、えっ!?」

今までどんなに言われても、誰かをモデルにして何かを作ったことは無かったのに!

思わず女神像をジッと見る。

自信ありげに微笑み、白い翼で今にも飛び出しそうだ。

青い空を自由自在に飛び回る姿が、目に浮かぶようだ。

「…でも何でアタシが女神なのよ? まあ天使ってガラじゃないけどさ」

「オレにとって、キミはめがみ!」

「はい?」

「だから、オレのそばに、ずっといて」

そう言ってぎゅうっと抱き着いてきた。

「あっあの、展開がよく分からないんだけど…」

「ふあんになんか、させない。オレは、ずっと、キミといっしょ」

「あっ…!」

…バレてたんだ。不安を感じていたこと。

「だれが、なんていおうと、オレはキミといっしょ。ぜったい、いっしょ!」

バカ力でぎゅうぎゅうと抱き締められる。

「ちょっ、苦しいわよ」

でも嬉しい!

改めて女神像を見る。

コイツの目には、こんな風にアタシが映っていたんだ。

「いっしょ?」

不安そうにアタシの目を覗き込んでくるものだから、アタシはキスをした。

「もちろんよ! アンタの面倒なんて、アタシしか見られないんだから!」

「うん! いっしょ! オレのおよめさん!」

…って、アレ?

今言われたことって、もしかして…。

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