《MUMEI》

(何で…)



「ボール早くッ!!」



「あっ…」



古賀に急かされ、


キーパーはボールを拾いパスを出す。



「ピッ!!」



ボールは海南。



「返しましょう!!」



ラインを跨ぐ。













……………













観客席。


ザワザワ…


「…へぇ。」


ザワザワ…


「?」


ザワザワ…


試合を観戦していた村木が珍しく声を漏らした。


ザワザワ…


「どうかしたんすか?」


ザワザワ…


それに気付いた椎名。


ザワザワ…


「今…ボール落ちたな。」


ザワザワ…


「…落ちた?」


ザワザワ…


「さすが村木。
僕にも落ちたように見えた。」


ザワザワ…


「え?ホントすか…?」


ザワザワ…


「うん。


球が速いからわかりにくいけど、


手元で微妙に落ちてる。」


ザワザワ…


「そんなことって…」


ザワザワ…


「可能だよ。
ボールに回転をかけなきゃいいだけ。」


ザワザワ…


「無回転ボール…」


ザワザワ…


「そう。


ま…あのスピードで尚且つ落ちるなんて反則技だけどね。


聖龍相手に7メートルは与えちゃダメってことだ。」


ザワザワ…


「いや…」


ザワザワ…


「?」


ザワザワ…


「面白い…俺が止める。」


ザワザワ…


「村木…」


ザワザワ…


(こいつが言うとマジでやらかしそうだから怖いわ。)


ザワザワ…


「…峰田。」


ザワザワ…


「ん?」


ザワザワ…


「気付いたか?ボール落ちたの。」


ザワザワ…


「いや…わからなかった。」


ザワザワ…


(…才能人の世界は異常だぜ。)


ザワザワ…

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