《MUMEI》

そこからトクトクと、
規則正しい将貴の心音が聞こえてくる。


けれど由梨香の心臓はバクバクと激しい音を立てていた。


相変わらず気持ち良さそうに寝ている将貴。


由梨香はその嫌に綺麗に整った顔を見ながら、
静かに呟いた。


本当に心臓が持たない。


「将貴、もう学校に行く準備しなくていいの?」


由里香の声が届いたのか、
将貴の目がうっすらと開いた。


そして不機嫌そうに眉を寄せると、


「たりぃ。」


再び目を閉じて由里香を強く抱きしめた。


「こうしている方がいい。」


掠れた声が由里香の耳に囁かれる。


くすぐったくなって、
身をよじろうとしたがそれも敵わない。


「もう、7時50分よ?」

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