《MUMEI》

「…何か仕組まれている気がするわ」

「へっ? 何が?」

放課後。もうすぐ期末テストで、アタシはいつものようにアイツの勉強を見てやっていた。

教室にはアタシとアイツしかいない。

「席替えよ。何でこうもアンタと同じ席にばかりなるワケ? 担任、押し付けようとしているのかしら?」

「押し付けって…ひっでーなぁ。オレのことかよ」

「他に誰がいるのよっ! てーか間違いばっかりじゃない! 本当に勉強してんの?」

「ん〜。家に帰ると、ゲームしたくなる」

「目と頭を覚ませ! 期末は一週間後なのよ!」

頭を掴み、グラグラと揺らす。

手荒く見えるかもしれないけど、こうでもしなきゃ起きないんだ、コイツは。

「ぐわわっ! わっ分かったから、止まってくれ!」

…にしても、コイツの髪って触り心地良いなぁ。

少しふわっとしたカンジで、手櫛をするとスルッと通る。

…アタシは毎日苦労してんのに。

頭を振るのは止めたけど、掴む手は放さなかった。

「ん? どうかした?」

アタシの心中を知らず、アイツは顔を上げた。

お互いの顔の近さに、思わず心臓が高鳴った。

誰もいない、誰も見ていない。

そのことがアタシをおかしくさせたのかもしれない。

ゆっくりと顔を下ろして、アイツにキスしていた。

「んっ…」

アイツは抵抗しなかった。

だから、長くキスは続いた。

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