《MUMEI》

唇を離した後、何となく気まずかったけれど、お互いに見詰め合っていた。

「…ゴメン。悪かったわ」

そう言ってゆっくりとアイツを解放した。

「何で謝るの? 抵抗しなかったのは、オレだよ?」

「アンタに好きな人がいたら、悪いことでしょう?」

「確かに好きな人はいるよ。…キミだよ」

「…えっ?」

驚いて目を丸くするアタシを、アイツは優しい表情で見ている。

「席替えの時、実はズルしてたの、気付かなかった?」

「はっ? ズル?」

クジは担任がお手製で作ってきたものだった。

それを出席番号順に引いていただけで、ズルなんてしている暇…。

「あっ、もしかして、担任と組んでたの?」

「大当たり〜! キミと一緒じゃなきゃ、絶対に勉強しないって、脅してた」

「んなっ!?」

クジを作ってきた担任ならば、いくらでも仕掛けられる。

だけどそんなの、教師がすることかぁ!

「実際キミと同じ席になって、オレの成績は上がったしね。さすがに三度続けば怪しまれるかなっと思ってたんだけど…」

「〜〜〜っ! 不思議だとは思ってたわよ!」

あり得ないハズの偶然だと思っていたわ!

…まさか仕組まれていたなんて…。

「…つーかそんなところで頭回さないで、勉強のところでフル活動しなさいよ」

「でもそれじゃ、キミはかまってくれないだろう?」

「かっー!」

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