《MUMEI》 未タイトル―あなたは誰ですか?― ―・・・。― 暗闇に少年は問う。 ―誰?― ―誰ですか?― ―アナタハダレデスカ?― ―答えろよ・・・― ―アナタハダレデスカ?― ―答えろって・・・!!― ―アナタハダレデスカ?― ―やめろよ・・・― ―アナタノ“名前”イタダキマス― ―やっ・・・やめろ・・・!!!― 少年は駆け出した。 その時、愚かにも背中を向けた。 ―名前をいただくってなんだよ!?― ―“名前”ヲイタダキマス― ―やめろ・・・来るなぁ!!!!!!― 手に腕に脚に頭に足首に胴に首に顔面に 人の腕のようなものがからみつき少年を押さえつける。 ―うっ― ―ああぁぁぁあぁあぁあぁぁぁぁああ!!!!!!!― 吸い取られていく。その腕に手に指に無抵抗に“何か”が奪われていく。 ひとしきり叫ぶと、少年はガクリと膝から崩れた。 手はするりと引いていった。 ―ひっ・・・― ―・・ひぃ・・・・― 美しく蒼い空色の瞳から光が消えていく。 そして、目の前には以前の瞳と同じ色をした4本足の龍がいた。 天使のような翼に、白銀の鬣。ガラスのように薄い光沢のある空色の鱗に包まれたトカゲの胴に獣の四肢と尻尾。悪魔の耳に剣の角。 少年の光りある頃の瞳のそれは、真っ直ぐに少年を見据える。 ―僕は・・ダレ?― ―・・・。― ―ボクノ名前ハドコ?― ―名前ヲカエシテ・・・。― 少年の瞳に深く深く闇が刻まれる。 空の海は深く深くなっていった。 闇が深く深く少年に根を張った。 次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |