《MUMEI》

「…ゲッホ、…んで、ごほっ、相手だれだ??」


おれの腕からやっと解放され、
せき込みながらも諦め悪く聞いてくる瀬田。



「あ゛あ!?」



誤魔化そうとすると、



「んまー、だいたい分かるけどな」



満面の笑みでおれを見てくる。
そして、おれの耳に顔を近づけると、こう囁いた。



「…蓬田、でしょ??」



「〜〜…っ!!!」



「お、また顔真っ赤。お前分かり易すぎ!!」



またげらげらと笑う瀬田。



おれ、そんな分かりやすいか…??



「まあ、最近お前蓬田のコトばっか見てたしな。こう、ぼけーっと」


瀬田が、だらしない顔(顔真似らしい)をしながら言う。



そうかあ…??



「ま、がんばりなさい!」



瀬田が、おれの肩をポンと叩いて微笑んだ。


むかつく。




しかし、おれ、そんなに蓬田のこと見てたか…??



―…あれ?



瀬田が言う『最近』って…




『おれ』として生活してたの、蓬田だったんじゃ…



…いや、そりゃおれが『蓬田』の姿で変な振る舞いしてないか気になってただろうから…



変に期待してしまいそうになって、おれは机に突っ伏した。

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