《MUMEI》
崩落
階段を降りると、狭い通路が奥へと続いている。
二人は足音をたてないように先へ進んだ。
少し行くと、売店や券売機が並ぶ広場に出た。
もちろん売店に品物は何もなく、券売機は破壊されて煙を吐いている。
電灯がチカチカと音を立てて点滅し、視界を不快に遮っていた。
ユウゴは広場を見渡した。
改札の近くにコインロッカーが立っている。
「あそこ、か?」
ユウゴは鍵を取り出した。
プレートの番号を確認する。
「どう?」
周りを警戒しながら、ユキナが聞いた。
ユウゴは首を横に振る。
「違うな」
「ここじゃないなら、あっち?」
ユキナは入って来た南口とは違う通路を指差した。
「よし、行ってみるか」
二人はその通路へ進もうと歩き出す。
……ガコン!
背後で何かが落ちる音が響いた。
二人はバッと振り向き、身構えた。
券売機の壊れた部品が床に落ちたらしい。
ユウゴは舌打ちをした。
「脅かしやがって」
「ほんとだよ」
ユウゴとユキナは神経を尖らせたたまま、再び歩き出した。
カツカツと二人分の靴音が響いている。
西口に続くその通路は、あと少しでロッカーというところで天井が崩落していた。
「マジかよ」
思わずユウゴは呟く。
「これじゃ、通れないね」
「ああ。あー、たしか、向こうの東口の方にもあったよな?ロッカー」
「……あった、と思うけど」
「しょうがない。先にそっち行こう」
ユウゴとユキナは広場まで引き返すことにした。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫