《MUMEI》

「もう動けないわ。」
未来は弱々しく
しかし、達成感に満ちた顔でそう言うと
空港の床に座りこんでしまった。

だが、周りの乗客が未来をほっとかない。
「あぁ、お嬢さんありがとう。」
背広を着た、優しそうな老人が笑顔で握手を求めた。
「えっ??…あ、はい。どう致しまして。」
未来は疲れているはずだが、心なしか嬉しそうだ。

気付いたら未来の周りには30人ほどの人だかりができていて、その一人一人が未来に感謝の言葉を述べていた。
その反面、大半の乗客は軽蔑の目で未来を睨み付けるか、彼女のおかげでではないと思い込むか、なんにもなかったように歩きだすかの3パターンにわけられた。

「坊主、これが現状って奴だ。
世界の人間が百人だとすると
30人は心よく感染者を受け入れ、
残りの70人はなんらかの形で対立する。」
ダリルはリクの頭をその大きな手でくしゃくしゃしながら言った。
「ダリル…だっけ??」リクは飛行機で未来が言ってたことを思いだした。
「ダリルは人間をどう思う??
やっぱ、対立はするしかない??
共存は無理だと思うか??」
(未来は人間はいくら助けても無駄だって言ってたよな。……………)

「…さぁな。」
ダリルは遠い目で言った

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