《MUMEI》 バカンス「国雄、これお土産にしようかな。」 気味の悪い人形を持ってきた。 「なんだこの魔よけになりそうなのは。」 光はたまに凄い奇抜なものを見付けてくる。 「いや、ウチ先輩達なら大抵のモノは受け取ってくれそうだし……ほら、子連れなの。」 持ってきた人形二体の間にもう一回り小さな人形があった。 「親子っぽいけど、男の子だろ?この小さいのにリボンついてるから却下。」 「ケチー」 光は俺に向かって不満を漏らした。 仕事の方は順調で、現在は休み時間の徘徊中だ。 「あれ、もしかして……」 日本語で呼び止め、光に向かって誰かが寄ってきた、反射的に盾になる。 「何か?」 「えーと、俺のこと覚えて無いかな?」 俺の知り合いらしいが……覚えて無い……。 「米岡です。」 名乗られても、余計に分からない。 「俺は颯太さん知ってる……。」 光が俺の後ろから米岡とやらを盗み見るようにして、もじもじしている。 「何?何?」 「人の肌に全身ペイントしたり、演出して舞台や音楽、道具まで一人で作ってしまう新進気鋭の現代アーティスト、米岡颯太さん……俳優としても評価されてるんだ。」 うっとりと見つめる光の瞳にはハートが映っている。 「……フゥン。」 棒読みになってしまう。 前へ |次へ |
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