《MUMEI》
Heven
夕暮れ

すでに列車内は、沈みゆく太陽の赤色に染まっていた。

赤毛の青年はひとり眠っていた。

うぅ・・うう

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」

両手を万歳と挙げ、絶叫のごとく絶叫した青年は、浅い眠りから覚めた。

「あ?」

なっ・・・

なんちゅう縁起の悪い夢・・・

青年は額に手を当て、ため息をひとつ漏らした。

「ったく・・・何で今更・・・。」

「今日は特別悪い夢を見たんだねぇ。ヘル。」

唐突に聞き覚えのある声が隣からした。

「ヘブン。」

ツインテールの長く蒼い髪にヘルと呼ばれた青年より薄色の純粋な蒼色の瞳。
肌は白く赤子のように柔らかそうなその少女はヘブン。

ヘルの旅の相棒だ。

「そんなに嫌なんだ。今回の依頼。」

「まぁな。」

そりゃそうだろ。

なんせ、血のパーティにご招待だぜ?

俺がこんな体でなければごめんこうむりたい・・・。

いや、マジで。

隣ではのんきに陽気にニコニコと笑う少女はなんともかわいらしいレースの付いたふわふわの黒いドレスばさばさと蹴り飛ばす。

萌・・・

「大丈夫だよ。あたしが血祭りにしてあげるから!」

「・・・。」

黙ってれば可愛いのになぁ。

「そういやヘブン。おまえいつからいたんだ?俺はひとりで列車に乗ったつもりなんだが。」

「ん。」

ヘブンがその細い指で天井を示す。

おぉう。

さすが大先生。屋根から侵入ですか・・・。

って

「おぃいいいいぃ!!!」

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