《MUMEI》 1997年6月12日今日もいつもとおなじように《蜘蛛の巣》の酒房の奥のカウンター中でグラスや食器を磨いていた。《蜘の巣》というのがこのバーの名前だけど、日本語で表記してるわけじゃない。看板には蜘蛛巣の上で脚をひろげた蜘蛛の絵にTeia de Alanha(テイア・ジ・アラーニャ)と表記されてる。 あたしの隣ではバーテンダーのケンジが手持ち無沙汰な様子で暇そうに煙草をふかしてた。 この酒房には壁掛けの時計などは置いていない。経営者のマーイ・マリアの方針で客に時間を忘れて飲み食いしてもらうためだ。 だけど、あたしは腕時計を嵌めてる。男物で日本製でセイコーという会社の物だ。針は8時45分を指してた。この腕時計はあたしがマーイ・マリアに引き取られたとき、死んだ母親の遺品として一緒に持ち込まれた物だ。マーイ・マリア言わせるとあたしの父親が 前へ |
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