《MUMEI》
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そこもまた、ホテルを模して幾つもの部屋が並んでいた
「513だ」
隆之が俺の肩を抱いて歩いた
501…502…503……
左右のドアに見える部屋の番号がどんどん大きくなる
511…512……
513。
俺らはそのドアの前で歩みを止めた
隆之が紙に目をやって
「ここ、だ。」
頷く
中からはスプリングが軋む音がしている
ここに来て、迷ってる
秀一が汚されてる瞬間なんて、見たくない…
失うことを認めるのが
…怖くて
いや、違う
俺は
「佑二…行くの、やめるか?」
「いや」
逃避してるだけ。
目を逸らしてるだけだ
「行こう」
そのときだった。
〈…ぅ…あッ…!…〉
「!!」
ドアの向こう側から
掠れた、声
アイツの、声
「しゅう、いち…!!」
「おい!佑二…」
隆之が止めるのも聞かずに
俺はドアを打ち壊さんばかりに開けた
俺の記憶に、そこから数分の出来事は
抜け落ちている
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